刑事モースは結婚するのか?最終回の真相と切ない理由を徹底解説

英国発の名作刑事ドラマ『刑事モース〜オックスフォード事件簿〜』(原題:Endeavour)。

シリーズ完結となったシーズン9の最終回を見た視聴者の多くが、こんな疑問を抱きます。

「モースは最終的に結婚したの?」

「ジョアン・サーズデイとの関係はどうなったのか?」

結論から言えば――モースは結婚しません。

そして、この選択こそが、モースという人物の本質を象徴しています。ここでは、最終回の詳細な流れや、彼が結婚に至らなかった理由、制作側の意図、原作との整合性まで徹底的に解説します。

刑事モース|最終回の結婚式シーンが意味するもの

シーズン9・最終回(Case36)のラストは、サーズデイ警部の娘ジョアンの結婚式。

相手は、モースの同僚であり旧友のジム・ストレンジ。モースとストレンジは一時期同居していたこともあった仲です。

式の場面でジョアンはモースにこう言います。

「わたしをジョアンと呼んでくれたことあった?」

モースはこう答えます。

 「きみの名前を呼んでしまったら、ずっと呼び続けてしまうから。

ぼくは、君を愛してる。きみがあの日ドアを開けてくれた瞬間から、愛してた。」「伝えるべきだった。もう遅すぎる。」

そしてジョアンは、

「遅くない。」

と微笑み、2人は熱烈にキス!

――が、これは心の中の幻想。最後の最後でなんともチープな演出!?ですが、これにも後述するとおり意味があります。

さて、これは、誰の幻想なのか。おそらくモース。あるいはジョアン。でも、視聴者の幻想なのかもしれません。

現実では、モースは彼女を「ミセス・ストレンジ」と呼び、2人は友人としてハグ。密かに涙を流すモース。

式を祝福しながらも、モースの孤独が際立ちます。しかも、過労からか倒れてしまうモースに、誰も気づかない。

視聴者が一瞬期待する“花嫁奪取”のような展開は起こらず、二人の想いはすれ違ったまま幕を閉じるのです。それどころか、幸せそうなサーズデイ一家と対比して、孤独かつ過労気味なモースという、決して交わることのない境界線が示されたような最終回なのです。

筆者の感想ですが、結婚式のシーンは、モースがハッピーエンドを選べない星の下に生まれたことを示唆しているのだと思います。現実世界というのは、器用にうまく生きた者勝ち。モースは、そのような立ち回りができない、あまりに対照的な存在なのです。

刑事モース|結局、モースは結婚したの?

結局、モースは生涯独身を貫きました。

「刑事モース」の最終回は前述のとおり。ずっと想っていたはずのジョアンとストレンジの結婚式で幕を閉じます。

「刑事モース」は、1987〜2000年に放送された「主任警部モース」の前日譚ですが、元ドラマである「主任警部モース」でも中年のモースは独身で、孤独な生活を送っています。

刑事モース|モースが結婚しなかった理由

モースはなぜ生涯独身で、誰とも結婚しなかったのでしょうか。

自己犠牲と誠実さ

まず、ジョアンと結婚しなかった件については、主演のショーン・エヴァンスはインタビューでこう語っています。

「モースは、自分の幸せのために他人の幸せを壊すような人間ではない。」

ストレンジはジョアンと結婚することで幸せになれる。ジョアンも、モースよりもストレンジのほうが安定した人生を送れるはず。
モースはその事実を理解し、自分の感情を抑えたのです。これは彼の誠実さであったのでしょう。

モースのキャラクターは一貫して、仕事への情熱と知的探求心を最優先してきた誠実な人物でした。ジョアンと一悶着することがモースの欲望を充たすとしても、それを望まなかったのは、モースのこれまでのキャラクターと整合するといえるでしょう。

原作・元ドラマとの整合性

前述のように、1987〜2000年に放送された「主任警部モース」では、中年のモースは独身です。過去に誰かと結婚していたことがある、といった話も皆無。

相変わらず、クラシックを聞きながら捜査活動に勤しんでいるだけなのです。

このため、前日譚でモースが結婚してしまうと、設定が狂ってしまいます。制作側としては、若きモースの日々に多少の色恋沙汰を盛り込みつつも、「最終的には生涯独身を貫いた男」を描く必要があったのです。

結婚させられないとはいえ、不満の残る描き方

モースのキャラクターも、主任警部モースで結婚していないことを踏まえたとしても、個人的には、制作者側がモースを「文学的な高み」へと押し上げすぎているような印象を受けました。

実にチープな妄想シーンを描くことで、モースにはあのような世俗的な幸せは不似合いだ、というような意図が示されていました。

誠実なモース。孤高のモース。そんな存在として美化するために、最終回でモースを孤独の奈落へと突き落としたような気がして、見ていて辛いものがありました。

ショーン・エヴァンスはインタビューで、「人々の記憶に残るのは、必ずしもハッピーエンドではない。」と述べています。なんとも、胸をえぐられるような、エンディングだったことは間違いありません。

刑事モース考察|「ファーストネーム」が持つ意味

刑事モースは、ジョアンのことをずっと「ミス・サーズデイ」と呼び続けました。

そして、サーズデイを始めとする親しい人たちにも、決して自分のファーストネーム「エンデバー」を呼ばせませんでした。(それどころか、あまり教えてもいない。)

最終回で、サーズデイがモースをファーストネーム「エンデバー」で呼ぶと、モースはこれを拒絶します。また、ジョアンがファーストネーム呼びについて言及すると、「ミセス・ストレンジ」と呼び、モースはまたも拒絶します。

要するに、「ファーストネームで呼ぶこと」は、モースにとって大きな意味があるのです。それは、真の意味で心の扉を開くこと――モースはそれを避け続けて生きているのです。そんな彼の生き方は、最後まで貫かれました。

刑事モースの結婚|まとめ

  • 刑事モースは最終的に結婚しません。
  • ジョアンとの関係は心の中でのみ成就。
  • 制作側は意図的にハッピーエンドを避け、原作キャラクターの一貫性を守っています。
  • 「名前」と「呼び方」が結末の象徴的モチーフ

「刑事モース」は、恋が実らない切なさと、孤高の刑事としての生き様を描き切ったからこそ、長く語り継がれる作品となったのでしょう。個人的には、中年期はまだしも、若い頃に関しては、もう少し幸せを描いてほしかったと思っています。

 

タイトルとURLをコピーしました