イギリスの本格ミステリードラマ『オックスフォードミステリー ルイス警部』で、主人公ロバート・ルイス警部の相棒として登場するのが、ジェームズ・ハサウェイ部長刑事です。
クールな知性と端正なルックス、そして少し皮肉混じりのユーモア——。
ハサウェイのキャラクターに惹かれた人は多いのではないでしょうか。
本記事では、このハサウェイ役を演じた俳優ローレンス・フォックスに焦点を当て、以下のポイントを掘り下げていきます。
- ローレンス・フォックスのプロフィールと名門俳優一家「フォックス・ファミリー」
- ルイス&ハサウェイの“師弟関係”の魅力
- 検索されがちな「ルイス警部 ハサウェイ 降板」と逮捕の真相
- ドラマ終了後の動向
作品ファンはもちろん、「あの俳優は今どうしているの?」と気になっている方の知的好奇心も満たせるよう、網羅的にご紹介します。
ハサウェイ役:ローレンス・フォックスのプロフィールとキャリア
ジェームズ・ハサウェイ部長刑事を演じたのは、イギリス出身の俳優、ローレンス・フォックス(Laurence Fox)です。
彼は単に人気ドラマに出演した俳優というだけでなく、英国芸能界の名門一族「フォックス・ファミリー」の一員であり、さらにミュージシャンとしても活動する多才な人物です。
英国芸能界の名門「フォックス・ファミリー」
ローレンス・フォックス(1978年5月26日生まれ)は、イギリスでもよく知られた俳優一家に生まれました。
いわゆる「二世俳優」ではありますが、家族の名声に頼るだけでなく、本人も確かな演技力でキャリアを築いてきました。
父は名優ジェームズ・フォックス
ローレンスの父は、英国映画史に名を残す俳優ジェームズ・フォックスです。 1939年5月生まれのジェームス・フォックスは父親は、俳優エージェント、母親は女優という芸能一家に生まれ子役の頃から活躍していましたが、父の死をきっかけに1970年代はクリスチャンとして宣教活動に専念していました。
その後再び俳優として復帰。ジェームス・フォックスにはローレンス・フォックスを含む4人の息子と1人の娘がいます。

似てるなー。
- 1963年『召使』
- 1984年『インドへの道』
- 1993年『日の名残り』
など、とにかく数々の名作に出演した名優です。ローレンスはものすごい血筋なんですね。どうりで、サブキャストなのに強いオーラがあるわけです。
ローレンス自身も、イギリスの有名な寄宿制名門校Harrow School(最近日本にもフランチャイズ校ができましたね)に通い、その後こちらも名門の演劇学校RADA(王立演劇学校)で本格的な演技教育を受けています。
「俳優一家の血筋」と「専門的なトレーニング」という、二重の土台の上にキャリアを築いている盤石な俳優さんといえます。
叔父は初代「ジャッカル」エドワード・フォックス
さらに、父の兄であるエドワード・フォックスも、世界的に知られる俳優です。1937年4月生まれのエドワード・フォックスは現在も俳優としてドラマなどに出演しています。

特に有名なのが、1973年のサスペンス映画『ジャッカルの日』。
冷酷な暗殺者「ジャッカル」を演じたことで、一躍その名を世界に知らしめました。リメイク版ではエディ・レッドメインがジャッカルを演じて話題になっていますよね。
その他にも、親族には俳優や芸能関係者がうじゃうじゃ。ローレンス・フォックスが単なる“人気ドラマのイケメン俳優”ではなく、DNAと生育環境の裏付けを持つ俳優であることを示しています。サラブレッドですね〜。
ローレンス・フォックスの基本プロフィール
名前:ローレンス・ポール・フォックス(Laurence Paul Fox)
生年月日:1978年5月26日
出身地:イングランド・ウェストヨークシャー州リーズ
職業:かつては俳優でしたが、最近はミュージシャンや政治活動家としての動きが活発なようです。
学歴:前述したイギリスの有名な寄宿制名門校Harrow Schoolへは13歳で入学。もうすぐ卒業試験(Aレベル)とうタイミングで、(噂では女性関係で)トラブルを起こし退学処分となったそうです。ルイス警部でも鋭く反抗的な目つきが印象的ですが、こちらは生来のもののようです。
その後は、王立演劇学校(RADA)に進学し、本格的な演技教育を受けましたので、親御さんたちもホッとしたことでしょう。
音楽活動:ローレンス・フォックスは俳優だけでなく、ミュージシャンとしても作品を発表しています。
- 1stアルバム:「Holding Patterns」(2016年)
- 2ndアルバム:「A Grief Observed」(2019年)
筆者は実際に聞いたことはないのですが、いずれも「内省的で感情のこもった作品で、俳優としてのイメージとは少し違う一面を見せている」と言われています。演技だけでなく、自ら曲をつくり歌うことで、表現者としての幅をさらに広げていると言えるでしょう。
政治・メディア活動:『ルイス警部』が2015年に終了した後、ローレンス・フォックスは俳優としての活動を続ける一方で、徐々に政治的な発言やジャーナリスティックな活動に軸足を移していきました。2021年の市長選立候補は日本にも漏れ聞こえてきていました。
- 2020年:右派ポピュリスト政党 「リクレイム党(Reclaim Party)」 を立ち上げ、党首に就任
- 2021年:ロンドン市長選に立候補(得票率約1.9%で落選)
- 2022年以降:ニュース専門チャンネル GB News で番組司会を務めるも、2023年に女性ジャーナリストへの発言をめぐる問題で契約解消となる
ハサウェイの「降板」は本当か?:シリーズ終了の真相
検索キーワードとしてよく見かけるのが、「ルイス警部 ハサウェイ 降板」というフレーズです。
結論から言うと、ローレンス・フォックスがシリーズ途中で自発的に降板した事実はありません。
ハサウェイは、ドラマが完結するシーズン9の最終話まで一貫して登場しており、
役を途中で降りたわけではないのです。シリーズが完結した事情はこちらの記事で詳しく掘り下げていますが、決してハサウェイがどうこうしたからではありません。
想像ですが、ドラマの終了=俳優の降板と受け取られたのは、後述するローレンス・フォックス本人の“その後の騒動”と結びつけられて、誤解が広がった可能性が高いでしょう。
俳優ローレンス・フォックスが解雇&逮捕された!
『ルイス警部』の後、フォックスはニュース専門局 GB News でコメンテーターとしても活動していました。
ところが2023年9月、番組「Dan Wootton Tonight」に出演した際、女性ジャーナリストのエイヴァ・エヴァンズ(Ava Evans)に対して、外見を嘲るような下品で侮辱的なコメントを連発。
この放送には 8,000件以上の苦情 が寄せられ、英国の放送監督機関 Ofcom が調査に乗り出します。
Ofcomは2024年3月、この回の放送について「視聴者を保護するルールに違反する、女性蔑視的な内容だった」と判断し、正式に放送コード違反と認定しました。
この騒動の中で、GB Newsはフォックスとの契約を打ち切り、彼は事実上、番組から解雇される形となります。
GB Newsでの騒動とほぼ同じタイミングで、フォックスは別件の容疑で逮捕されています。
ロンドンでは、大気汚染対策として ULEZ(Ultra Low Emission Zone) という有料ゾーンが導入され、その課金や監視に使われるカメラが多数設置されています。
一方で、この政策に反対する一部の市民が「Blade Runners(ブレード・ランナーズ)」と呼ばれるグループを名乗り、カメラの破壊・切断などの器物損壊行為を繰り返していることも問題になっていました。
ローレンス・フォックスは、こうしたグループに対してSNSや配信で同調的とも取れる発言をしていたと報じられています。
警察当局は、これらの発言が「カメラ破壊を煽った(扇動した)」可能性があるとみなし、2023年10月4日、ロンドンの自宅を家宅捜索した上で、フォックスを
- ULEZカメラへの器物損壊を共謀した疑い
- 犯罪を助長・幇助した疑い
で逮捕しました。政治的発言が原因で逮捕されるというのはなかなか衝撃的ですね。皮肉屋で不器用なハサウェイが・・・とルイス警部ファンとしては複雑な気持ちになります。
この事件、今年に入ってもまだまだ進行中で、2025年5月16日、フォックスはロンドンのウェストミンスター治安判事裁判所に出廷し、「ULEZカメラ破壊を助長・扇動した罪」で正式に起訴されました。
検察側いわく、
- 2023年9〜10月にかけてX(旧Twitter)やポッドキャスト等で
ULEZカメラを破壊する「Blade Runners」を称賛した - カメラを壊した者への「報酬」について言及した
- 「カメラを引き倒す」といった趣旨の発言を発信した
などが、「器物損壊を助長しうる発信だった」ということです。(2025年12月時点でまだ有罪・無罪は確定していません)
ところが、ローレンス・フォックスのトラブルはこれだけにとどまりません。別件で性犯罪に関する容疑もかけられているんです。
2024年4月ごろ、テレビパーソナリティで元『ビッグ・ブラザー』出演者のナリンダー・カウル(Narinder Kaur)の、いわゆる「アップスカート写真」(スカートの中が写った盗撮に近い画像)とされる写真を、SNS(X)上に投稿したとして、2025年3月に性犯罪で起訴されました。
フォックスは2025年4月の初公判で全面的に無罪を主張しており、
裁判は上級裁判所(Woolwich Crown Court)で陪審員裁判に付される予定と報じられています。(こちらもまだ有罪・無罪は確定していません)
刑事事件とは別に、フォックスは名誉毀損訴訟でも大きな判決を受けています。
SNS上で自分を「人種差別主義者」と批判した2人の男性に対し、フォックスが逆に彼らを「小児性愛者」と呼んだことが問題となり、名誉毀損で訴えられました。
2024年1月、この訴訟でフォックスは敗訴し、2024年4月には、2人に対して合計18万ポンド(各9万ポンド)の損害賠償を支払うよう高等法院が命じています。2025年12月時点のレートで3700万円ほど!口は災いの元ですね。
これは俳優としてのキャリアだけでなく、政治活動家としての信用面でのダメージも非常に大きい判決となりました。
なんだかすっかりお騒がせ芸能人となってしまったローレンス・フォックス。名門芸能一家の生まれだけに英国での注目度も高いのでしょう。
ルイス警部とハサウェイの「師弟関係」徹底考察
「ルイス警部」の演技のほうに話を戻しましょう。
ロバート・ルイス警部とジェームズ・ハサウェイ部長刑事。
この二人のコンビは、英国ミステリーの中でも特に人気の高い“バディ”のひとつです。
単なる上司と部下という関係を超えて、視聴者からは「ルイス警部 相棒」として強く支持されています。
正反対の二人が生み出す化学反応
【ロバート・ルイス警部】
労働者階級出身で、長年の現場経験からくる勘と人間観察を武器にしたベテラン刑事。
【ジェームズ・ハサウェイ部長刑事】
オックスフォード大学出身、元神学生という異色の経歴を持つ、知性派の若手刑事。
地に足のついたルイスと、どこか浮世離れしたハサウェイ。
この対照的な二人が、学問の都オックスフォードを舞台に事件を解決していく構図こそが、『ルイス警部』シリーズの大きな魅力です。
ルイスの温かさと人生経験、ハサウェイの鋭い知性と論理性。
互いの弱点を補い合うバランスの良さが、見ていて心地よいコンビになっています。しかも、ハサウェイは主任警部モースと同じく異色の知性派。現場叩き上げのルイスはなぜか変わり者と組む運命のようです。
「父と息子」にも似た関係性の変化
シリーズ初期では、ルイスがハサウェイを導く「師匠」としての側面が強く、ハサウェイはどこか距離を取る“皮肉屋の部下”という印象があります。
しかし物語が進むにつれ、その関係性は少しずつ変化していきます。ルイス警部の引退へ向けて、ハサウェイが捜査を率いる回が増え、また互いに私生活や内面の苦悩に寄り添うシーンが描かれていくことで、お互いの弱さも見せ合う「相棒」へと成熟していく様子が見事に描かれています。
単なる「上司と部下」から、「父と息子」、「盟友」とも言える関係にまで深まっていく過程こそ、ファンの心をつかんで離さないポイントですね。
ルイス警部も、ハサウェイも、最初は主人公の相棒という立ち位置での登場なのに、なぜか圧倒的な存在感があるんですよね。不思議な2人です。
まとめ:知性あふれる「ハサウェイ」と、その裏側にいる俳優の現在
あらためて整理すると、ローレンス・フォックスとハサウェイ役についてのポイントは次の通りです。
- ハサウェイは、『ルイス警部』全9シーズンを通して登場する重要キャラクターであり、「降板」したわけではない
- ローレンス・フォックスは、父ジェームズ・フォックス、叔父エドワード・フォックスを擁する英国の名門俳優一家出身
- 『ルイス警部』終了後は俳優業だけでなく、政治的・言論的な活動や音楽活動にも踏み出したが、近年は物議を醸す発言・行動でニュースを賑わせている
ドラマの中のハサウェイは、ルイスとともにオックスフォードの街を歩き、静かな皮肉と深い思索で事件の真相を解き明かす、
非常に魅力的なキャラクターでした。
一方で、その裏側にいる俳優ローレンス・フォックスの人生は、決して平坦ではなく、今もなお賛否入り混じった形で注目を集め続けています。


