警部マサイアス・シーズン3で伏線すべて回収!悪魔の橋の真実とは?

ウェールズの海岸線と崖の写真 作品・考察

“とにかく暗い”と評判のドラマ『警部マサイアス(ヒンターランド)』も、いよいよ最終章・シーズン3へ突入しました。
このシーズンはまさに「集大成」。シーズン1の第1話から積み上げられてきたすべての出来事が、伏線となり、ここでつながっていきます。

これまでのシーズンで見えてきた

マサイアスの“弱さ”

を踏まえたうえで、最終章では

“正義を貫く強さ”

が描かれます。
ドラマの”暗さ”に圧倒されて、何度か視聴継続を挫折しそうになった筆者も、見終わるころには「こんな傑作があったのか」と心が震えました。

この記事では、犯人のネタバレを避けながらも、「悪魔の橋」事件から派生するまさかの真相に深く迫っていきます。※各エピソードの事件の犯人のネタバレはありませんが、全体を貫く事件の犯人のネタバレや登場人物の私生活のネタバレがあります。ご注意ください。

ちなみに・・・ウェールズに詳しい人によると「警部マサイアスの陰鬱な描写は、夏以外はわりと本当のこと」なのだとか。なるほど、あの重たい空気感も吹きすさぶ崖上の強風もリアルだったわけです。
そして英語圏の視聴者でさえ「訛りが強くて字幕なしでは厳しい」と嘆くほど。現地の方言やスラングが飛び交うリアルな世界が、この作品の魅力のひとつでもあります。

とにかく、頑張って全シーズンを見終えてほしいです。後悔はさせません!

「警部マサイアス」S3・第1話「牧師の秘密」あらすじ

『警部マサイアス(ヒンターランド)』シーズン2のラストで、マサイアスの崖上の家(家と呼ぶよりもはや小屋に近いですが)が放火され、炎に包まれました。
呆然と燃える家を見つめる彼の背後から、何者かが襲いかかる――そして、意識を失うマサイアス。

シーズン3でこの放火・暴行事件を担当するのは、部下のオーウェンズ巡査部長。金髪の若い女性刑事です。
オーウェンズは、マサイアスを恨む元警官イワン・トーマスが犯人ではないかと疑います。イワン・トーマスとは、シーズン1で<マサイアスが肉体関係を持ち、そのことが原因で犯人に殺されてしまった女性>の夫です。シーズン2でイワンが再び登場したときには、「誰だっけ?」と違和感を持った方もいたと思います。シーズン3でイワンがキーパーソンとなるための布石だったのですね。

一方アベリストウィスでは、牧師が教会で殺害される事件が発生します。
『警部マサイアス』シリーズでは、一貫して、子を失った親や、過去や秘密を引きずる家族が登場し、マサイアスが彼らと向き合うたび、自らの罪や喪失と否応なく対峙することになるという構図が描かれます。殺された牧師の家族にはどのような過去や秘密があるのか…マサイアスたちが真相を明らかにしていきます。

そして第1話のラスト。再び衝撃の展開が待ち受けます。
イワン・トーマスがマサイアスやプロッサー警視正の周辺をうろつき始め、ついに警視正を「悪魔の橋」へと呼び出します。
「あなたも児童虐待に関わっていたんじゃないのか?」と詰め寄るイワン。
追い詰められた警視正は――彼を橋から突き落とします。

シーズン1の第1話で出てきた、あの「悪魔の橋」です。滝がある、あの橋の高さから落ちて助かるはずがありません。まさに、息を呑む衝撃のラストでした。

シーズン3第1話 感想

シーズン2のラスト(マサイアスの小屋が火事で燃える)を受け、どのような展開になるのか期待に胸を膨らませて見始めました。

シーズン3では、映像がさらに洗練されたように感じられ、強調された光と影が登場する家族の心情と美しくリンクしているようです。

マサイアスはこれまでよりも若干会話が増えたように見え、相棒のリース警部補とのやり取りにも人間味が出てきたようです。マサイアスの言葉数が増えた分、視聴者にもドラマがわかりやすくなった印象です。

第1話で特に印象的だったのは、

「誰も親を選べない。運任せだ。」

というマサイアスの言葉。人間の根本を突く、深い一言でした。この親、この土地、この時代。人は自分で選べない要素を多く抱えて生まれてきます。運悪く辛く苦しい人生を歩むことになった人々と向き合うのが、警部マサイアスたちの仕事なのですね。

第1話に関しては、犯人がまたも自殺という展開には少し複雑な気持ちも残りました。アベリストウィスのような閉鎖的なコミュニティーでは、真相に迫ることイコール犯人を追い詰めることになり、まるで捜査そのものが“罰”か”私刑”のように機能しているようで考えさせられました。

それにしても、プロッサー警視正。怪しい(というよりも怪しさ満点に描かれてきた)とは思っていましたが、まさか本当に人を殺すとは。思わず「えーっ」と声を上げてしまいました。

第2話「裏切られた愛」あらすじ

美術学校の職員であり、画家のモデルでもあった女性が全裸遺体で発見されます。
同じ頃、「悪魔の橋」の下でイワン・トーマスの遺体も見つかりました。プロッサー警視正が落とした元・警察官のイワンです。
マサイアスは現場に急行しますが、プロッサー警視正はマサイアスを捜査から外し、「利害関係のない捜査官に任せる」と指示します。

実際には警視正こそが犯人。過去を隠蔽したい仲間たちからも「自殺として片付けられるような処理をすればよかったのに」と責められ、プロッサー警視正は追い詰められていきます。

そして、「利害関係のない捜査官」として、別の署から送り込まれた捜査官ジョン。
驚くことに彼は、リース警部補の元恋人であり、娘エリンの父親でもありました。
妻子あるジョンと関係を持ち妊娠したため、リースはシングルマザーとして娘を育ててきたのでした。ここで、リースの私生活の謎が明らかになりましたね。

事件のほうは、やがて、被害者が実は妊娠していたことが判明し、一気に解決へと動き出します。

シーズン3第2話 感想

今回の事件は切なくも現実味のあるストーリーで、ぐっと引き込まれました。
それにしても――筆者は言いたい。

マサイアス、女性が隙を見せるとすぐ行く!
そして画家はだいたいモデルに手を出す!

…人間の性でしょうか。思わず苦笑いした第2話でした。

一方で、リース警部補の元彼が登場したことで、彼女の子育てがなぜ重苦しく描かれているのかが視聴者に明かされました。
シングルマザーとして娘を育てる彼女の姿は、強くもどこか痛々しく、応援せずにはいられません。

第3話「暴走の果て」・第4話「奪われた人生」(最終話)あらすじ

第3話は、冒頭から犯人が明かされるという異例の構成で展開されます。
もはや“謎解き”というより、追い詰められた人間の末路を描く心理劇のようです。

一方で、プロッサー警視正が橋から落としたイワン・トーマスの事件は、リースの元彼ジョンがどんどんと核心に近づきます。ジョン、やるじゃないか!と期待したのもつかの間、ジョンは黒幕に脅されて失速。
結局、保身に走ってしまいます。やっぱりこういうタイプ(不倫相手を妊娠させても自分の身を守り続ける男)は最後まで頼りにならないですね…。

(※以下、犯人のネタバレがありますので、未視聴の方はご注意ください。) そして、最終話である第4話「奪われた人生」は、シーズン1の第1話「悪魔の橋」で登場したカトリンが自殺を図る場面から始まります。
医療施設にいた彼女の精神状態は、数週間前にイワン・トーマスの訪問を受けて以来悪化していました。
イワン・トーマスのほうも、カトリンを訪ねた2日後に、遺体で発見されています。被害者や真相に迫る人物が次々と死んでいくという怒涛の展開。

カトリンとイワンがつながったことで、マサイアスは、イワンが「悪魔の橋」の児童養護施設に関する真実を掴んだことで殺されたと確信します。

「傷ついた者がいるなら、誰かが責任を取るべきだ」

そう信じるマサイアスは、最後まで真相を追い続ける手を緩めません。脅しにも屈することなく、刑事としての信念を貫く彼とリース、そして仲間たちの姿が、強く胸に残る最終話です。

カトリンのような無垢な子どもたちを虐待していたのはいったい誰だったのか。
それは、プロッサーやイワンの元上司で、「更生プログラムの指導」を名目に児童養護施設に入り込んでいたオーウェン元警視正でした。
さらに、イワンだけでなく、かつてオーウェンの悪事を止めようとして命を落とした医師がいたことも明らかになります。

第3・4話&「刑事マサイアス」全体の感想

シーズン1の伏線を最終話で見事に回収する構成には、ただただ脱帽しました。
「閉鎖施設での虐待」や「上司が敵」という設定は少し既視感もありましたが、とにかく、

  • シーズン1とシーズン2でマサイアスの人間としての弱さを見せつける
  • そのうえでシーズン3で正義を全うする彼の強さをしっかりと描く

という展開が秀逸!圧倒的に暗く重いミステリーだと思っていましたが、観終わったあとは、「こんな傑作があるだろうか」と心が震えるドラマでした。自信を持っておすすめできる名作だと思います。

筆者個人としては、ただただカトリンがかわいそうで、マサイアスの内なる怒りに強く共感しました。そして、最後に、職務だと信じて悪事に手を染めていったプロッサー警視正の悲しい姿が映し出されたときには、

結局、「正義」とはなんなのか。なぜ、我々の内なる声は<正義を全うすべきだ>とささやき続けるのだろうか。

という哲学的な問いが頭の中をぐるぐると巡るのでした。

特に、刑事たちは、「人間の弱さ」と「正義感」という対立軸を常に持ち続け、非常に危ういバランスの上に立っているのだと思います。マサイアスも、プロッサー警視正も、そうでした。

まとめ:「警部マサイアス」のラストシーズンは、見逃せない!

『警部マサイアス(ヒンターランド)』のシーズン3は、シリーズ全体の伏線を回収し、主人公マサイアスを始めとする登場人物すべての人間の核心に迫る完結編です。

正直、途中の重苦しさに「もういいかな」と感じる瞬間もあります。筆者も、シーズン2の途中で挫折しかけました。でも、最後まで見届けたとき、その暗さ・重さの意味がすべて腑に落ちるんです。
誰もが抱える弱さ、静かに燃える怒り、救いのない現実を描き切ったこの作品は、まさに“観る者に問いかけてくるミステリードラマ”です。

シーズン1から3まで通して観ることで、初めて見えてくる深みがある傑作ミステリーシリーズなので、ぜひ、最後まで観ていただきたいです。

👇️シーズン1、シーズン2のあらすじ(犯人のネタバレは無し)はこちらをどうぞ👇️