「不可能な物を除外していって、残った物がたとえ信じられないことでも、それが真相なんだ」
──この名言、聞き覚えがある方も多いのではないでしょうか?
実はこの言葉、名探偵コナンの主人公・工藤新一(江戸川コナン)がたびたび引用する、シャーロック・ホームズの名言です。
本記事では、この名言を含むコナンが引用したホームズのセリフを、
・ 英語原文
・ 原作ホームズの出典と背景
・ 名探偵コナンで引用された具体的なシーン
・ 名言の意味と、なぜコナンが引用するのか?
という観点から詳しく解説していきます。
不可能を除外していく──コナンとホームズをつなぐ名言
工藤新一=コナンが最も多く引用したホームズの名言がこれです。
不可能な物を除外していって残った物が…たとえどんなに信じられなくてもそれが真相なんだ
原作のどんな場面で登場し、アニメでどう使われたのかを詳しく見ていきましょう。
名言の全文と英語原文の場面解説
不可能なものをすべて除外したとき、残ったものがいかにあり得そうもなくても、それが真実である
When you have eliminated the impossible, whatever remains, however improbable, must be the truth.
このセリフは、アーサー・コナン・ドイルの「シャーロック・ホームズの冒険」『四つの署名(The Sign of Four)』に登場する、シャーロック・ホームズの代表的な言葉です。
英語でも非常に有名で、世界中のミステリーファンに愛されています。
【原作の場面解説】『四つの署名』で、シャーロック・ホームズがたどり着いた”あり得そうもない”、”信じられない”真相とは…なんと、殺人の犯人の1人が「身長が非常に小さく、裸足で、南国育ちで、毒矢を吹き矢で発射できる能力を持つ人物」ということ。
そんな人物、ロンドンにいる?と思うでしょうが、実際にインドから連れてきた原住民のトンガという人物が該当しました。
突飛な真相にたどり着いた際、ワトソンが「それはさすがにありえないのでは…」と驚いたのに対し、冷静にこの明言を言い放つのです。
【英語の解説】the impossible=不可能なものをeliminate=除外し終えたあと、whatever remains=残ったものが何であれ、however improbable=どれほどありえないものでも、それが真実だ。
名探偵コナンでの引用シーン(アニメ第223話)
この名言は、アニメ『名探偵コナン』の第223話「そして人魚はいなくなった(推理編)」で引用されました。
離島で行われる神事の中で発生した密室殺人。印象的な見た目の、小柄なおばあさんが出てくるエピソードです。
コナンは服部平次に自分の推理を披露します。それに対して、平次は、「あほー、そんなわけあるかい!おれは絶対信じひんぞ」と驚きます。そのとき、コナンがこのシャーロック・ホームズの名言を言うのです。
この場面は、論理こそが真実に至る唯一の道であるという、コナンとホームズに共通する哲学が象徴された名シーンです。
なぜコナンはシャーロック・ホームズの名言を引用するのか?
コナン(工藤新一)は、幼少期からホームズに心酔し、探偵としての理想像をホームズに求めてきました。
彼にとって、シャーロック・ホームズの名言は「かっこいいセリフ」ではなく、自分の行動哲学を言語化したものなのです。
感情よりも論理を信じるコナンの姿勢
現実の人間は、「あの人が犯人のはずがない」「そんな手段はありえない」といった先入観にとらわれがちです。
しかし、コナンはそれを排除し、「不可能を除外し、残ったものを疑え」というホームズの教えに忠実に従っています。
そのため、この名言を口にする場面では、必ずといっていいほど事実と論理だけを武器に真相を導き出す彼の姿が描かれています。
他にもある!コナンが引用したホームズの名言ランキングTOP3
コナンが引用したホームズの名言は他にもたくさんあります。ここでは、代表的なものをランキング形式でご紹介します。
「名探偵コナン」でコナンが実際に名言を引用した場面も解説しますので、ぜひ復習してみてくださいね。
第1位:「不可能を除外していけば、それが真相」
→ 詳細は、前述のとおり。
第2位:「君を確実に破滅させられるなら、僕は喜んで死を受け入れよう」
【原作の場面解説】
このセリフは、シャーロック・ホームズがモリアーティ教授に対して言ったものです。
モリアーティは、ロンドンの犯罪界に深く関わっており、彼を排除することが公共の利益になるとシャーロック・ホームズは考えていました。
まず、モリアーティが、「もし君が私を滅ぼすほど賢いのならば、私も同じことをするだろう」と挑発してきます。自分の犯罪を邪魔するシャーロック・ホームズに警告をしているのです。
これを受けて、シャーロック・ホームズは、「賢い」という褒め言葉に礼を述べて、「former eventuality=前者の結果=モリアーティの破滅」が確実なら、「latter=後者=自分の破滅、死」を喜んで受け入れると返答しているのです。
さらに、モリアーティは、“I can promise you the one, but not the other”と返答しています。これは、モリアーティの破滅とシャーロック・ホームズの破滅、そのうちシャーロック・ホームズの破滅は約束できるけれど、もう1つのほうは約束できないという意味です。
バチバチの緊迫感あふれる会話だということがわかりますね。
【コナンの場面解説】
劇場版「ベイカー街の亡霊」で、毛利蘭の回想シーンとして出てきます。遊園地デートで新一が蘭に、自身の好きなホームズの言葉として紹介したのですが、蘭ははっきりと思い出せません。
ゲームの中で列車の屋根にとらえられた蘭は、絶体絶命の状況下で、新一の言った言葉をついに思い出します。それが、「君を確実に破滅させることができれば、公共の利益のために、僕は喜んで死を受け入れよう」だったのです。
そして「ライヘンバッハの滝よ、コナンくん!」と叫んで、蘭はジャック・ザ・リッパーとともに谷底へ落ちていきます。蘭が、シャーロック・ホームズや新一の信念に共感し、正義のためにとっさに自己犠牲を捧げた名シーンでした。(※ヴァーチャルなゲーム中の落下なので、命に別状はありません。)
第3位:「初歩的なことだよ」
Elementaryは、初歩の、という意味です。Elementary Schoolで覚えている人も多いと思います。すなわち、ニュアンスとしては、「実に簡単なことだよ。言うまでもない」みたいな感じです。
【原作以外での場面解説】
原作では”Elementary.”だけです。ただ、今では、”Elementary, my dear Watson.”、「初歩的なことだよ、ワトソン君。」のほうが有名です。これは、シャーロック・ホームズを初めて舞台で演じた俳優ウィリアム・ジレットのセリフです。
また、「エレメンタリーホームズ&ワトソンinNY」というアメリカのドラマがあります。このドラマは2012年から2019年まで全7シーズン放送され、大ヒットしました。このドラマタイトルは明らかにシャーロック・ホームズのこの名言からつけられていますね。
【コナンの場面解説】
名探偵コナンシーズン1の第2話、新一がクスリで幼児化してはじめて阿笠博士に会う場面です。「俺が新一なんだよ!」と言っても、阿笠博士は当然信じません。
自分が新一だと信じてもらうために、阿笠博士の個人情報を披露したり、今日の行動を推理して見せるコナン。すると、阿笠博士が驚いて、「き、君は…!?」と言います。
そこで、コナンが、「チッチッチ、初歩的なことだよ、阿笠くん。」と言ってみせます。このセリフを聞いて、阿笠博士は、眼の前の小学生が新一だということを信じるのでした。
この場面では、コナンの背後に新一の姿がオーバーラップしているので、おそらく高校生の新一もシャーロック・ホームズのセリフをよく使っていたのだと思います。
まとめ|名探偵コナンとホームズ名言の精神的つながり
「不可能な物を除外していって、残った物がたとえ信じられないことでも、それが真相なんだ」──
この言葉は、コナン=工藤新一の探偵としての信念そのものです。
アーサー・コナン・ドイルが描いたホームズの名言は、単なるかっこいいセリフではありません。
それは論理、推理、そして正義を追い求める者の覚悟が宿った「哲学」でもあるのです。
だからこそコナンは、それを口にし、行動で示し、数々の事件を解決してきたのでしょう。
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