「えっ、この人いなくなっちゃったの⁉︎」
BBCの大人気ミステリードラマ「ブラウン神父(Father Brown)」を見ていて、そう感じたことはありませんか?
イギリスののどかな田園を舞台に、カトリックの神父が次々と事件を解決していくこのシリーズ。ゆったりとした雰囲気の中に、鋭い推理とユーモアが散りばめられており、長年にわたって多くのファンに愛されてきました。
ところが……
気がつくと、あのキャラクターがいない。
入れ替わるように新キャラが登場している。
「どうして?降板の理由は?また戻ってくるの?」と、疑問を抱く視聴者も多いはず。
この記事では、主要キャストの降板理由を徹底調査。
本人のインタビュー発言や公式発表、ファンの考察などをもとに、“ブラウン神父の裏側”を掘り下げてお届けします。
バンティ役・エマー・ケニー降板の理由:女優から脚本家へ転身
社交界育ちの元気娘・ペネロペ・バンティ・ウィンダミア(Penelope “Bunty” Windermere)を演じたエマー・ケニー(Emer Kenny)は、シーズン5〜8にかけて主要キャストとして活躍(2017〜2021年)。しかし、突然シリーズから姿を消しました(シーズン9ではゲスト出演)。
エマー・ケニーは、2010年ごろから脚本家としての才能を開花させ、BBCドラマ『EastEnders』や『Harlots』などの脚本を手がけています(出典:Emer Kenny wikipedia)
2022年には『Karen Pirie』の脚本で、エドガー・アラン・ポー最優秀テレビエピソード賞にノミネートされています。(出典:EdgarAwards.com)
バンティことペネロペの降板理由について公式な言及はないものの、演じるエマー・ケニーのキャリア志向による卒業と見られています。
なお、共演者のジョン・バートン(John Burton)はブログで彼女を「グラマラスで才能ある女性」と称賛。降板は惜しまれましたが、新たな才能の開花に多くのファンが拍手を送りました。
シド・カーター役・アレックス・プライス降板の理由:ハリポタ舞台出演のため?
泥棒から神父の助手へ。異色キャラとして人気を博したシド・カーター(Sid Carter)を演じたアレックス・プライス(Alex Price)。
シド・カーターは、シーズン1〜4でレギュラー出演。その後、突然姿を消しました。
降板の理由は明言されていませんが、アレックス・プライスはレギュラーを降りていた期間(シーズン5以降)、舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』でドラコ・マルフォイ役に抜擢されていました。そのため、スケジュールの都合が降板の主因だったと考えられています。
とはいえ、シーズン5、6、8では合計4回ゲスト出演しており、制作側との関係は良好のようです。
また、シーズン9にはレギュラーとしてカムバック。計6話に出演しました。
このように、「ブラウン神父」はキャスト降板後も再登場の余地を残しており、「別れ」が完全な終わりではないのが大きな魅力です。
サリバン警部補役・トム・チェンバースの不規則な出演:なぜ戻ってまた消えた?
シーズン2・3に初登場したサリバン警部補(DI Sullivan)。演じたのはイギリスの実力派俳優トム・チェンバース(Tom Chambers)です。
降板後、シーズン7と8にゲストとして再登場したかと思えば、また姿を消し……まさに“出たり消えたり”を繰り返すレアキャラ。
この背景には、トム・チェンバースの多忙な俳優業が影響していると見られています。医療ドラマ『Casualty』や『Emmerdale』など他作品への出演が重なっていた時期と一致しており、出演スケジュールの確保が難しかった可能性があります。
ちなみに、シーズン10では正式に復帰。彼の再登場を待ち望んでいたファンには嬉しいニュースとなりました。
レディ・フェリシア役・ナンシー・キャロル降板の理由:大人の事情と“駆け落ち”?
シーズン1〜4で登場した上流階級のご婦人、レディ・フェリシア(Lady Felicia)を演じたナンシー・キャロル(Nancy Carroll)もまた、突然の卒業組。
明確な説明はなかったものの、制作側のキャラクター刷新方針に沿った降板だと見られています。
ナンシー・キャロルも舞台女優としての評価が高く、英国ナショナル・シアターなどで活躍中。
そして、シド同様に、レディ・フェリシアもレギュラー降板後も不定期にゲスト出演しており、「レディの帰還」があるたびにSNSがざわつくほどの人気ぶりです。
マッカーシー夫人役・ソーチャ・キューザック降板の理由:長年の貢献と惜しまれる卒業
シリーズ1から9まで出演し、ブラウン神父の“もう一人のお母さん”的存在だったマッカーシー夫人(Mrs McCarthy)。
マッカーシー夫人を演じたソーチャ・キューザック(Sorcha Cusack)は、アイルランドの名門俳優一家の出身です。
降板はシーズン9で描かれ、妹の世話を理由にケンブルフォードを去るというストーリー展開に。
降板の理由は明らかにされていませんが、1949年4月生まれのソーチャ・キューザックとしては、体力などを考慮しハードな撮影が続くシリーズものへの出演を控えたのかもしれません。その後、俳優としてのテレビ出演は単発ものになっています。
なお、彼女の後任的ポジションとして、ディヴァイン夫人(Mrs Devine)がシーズン10から登場し、シリーズに新たな風を吹き込んでいます。
スージー役・ロレーヌ・アッシュボーン:初期設定からの変更?
ポーランド出身の家政婦スージー(Susie)はシーズン1限定のキャラクター。
演じたロレーヌ・アッシュボーン(Lorraine Ashbourne)は多くの英国ドラマに出演する名バイプレイヤーです。
降板の背景には、物語の時代設定の変更や制作方針の転換があったと考えられています。
時代設定の変更を詳しく説明すると、「ブラウン神父」は1950年代のイングランドを舞台にしていますが、シリーズが進むにつれて、物語の世界観や社会背景も少しずつ変化していったのです。
スージーの登場していた初期エピソードは、戦後間もない頃(1950〜51年ごろ)を反映しており、戦争の影響でイギリスに移住してきた労働者(特に東欧系移民)を描く意図がありました。スージーもその設定の一部と考えられます。
しかし、シーズン2以降は1953年以降に時代が進み、移民問題や社会的テーマからはやや距離を置く方向に物語が変化。加えて、シリーズのトーンも「クラシックで牧歌的な英国ミステリー路線」へと舵を切り、キャラクター構成もそれに合わせて調整されたと見られています。
また、スージーは教会での家事担当という役割でしたが、シーズン2以降に登場するマッカーシー夫人(Mrs McCarthy)が“家事・秘書・ツッコミ役”を一手に担う存在へと進化していきます。制作側としても、スージーとマッカーシー夫人が同じ空間にいると、役割が重複してしまい、ドラマのテンポや構成が複雑になる懸念があった可能性があります。
現在の主要キャストは?
2025年現在、シリーズはシーズン12まで放送されており、以下のキャストがレギュラーとして出演中です。(出典:BBC Media Centre)
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マーク・ウィリアムズ(Mark Williams):ブラウン神父役(全シーズン通して主演)
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トム・チェンバース:サリバン警部補(シーズン12で復帰)
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クローディー・ブレイクリー:ディヴァイン夫人
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ルビー=メイ・マーティンウッド:ブレンダ
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ジョン・バートン:グッドフェロー巡査
マーク・ウィリアムズは、「ブラウン神父という人物は常に何を考えているかわからない。演じていてまったく飽きが来ない」と語っており、まだまだ続投の可能性は高そうです。
まとめ|ブラウン神父キャスト降板の理由=“シリーズを生かすための戦略”
「ブラウン神父」におけるキャスト交代は、単なる“卒業”ではありません。
それは、シリーズの新鮮さを保ち、長期的に楽しんでもらうための“戦略”でもあるのです。
もちろん、俳優側の事情(他作品への出演、キャリア志向など)も絡んできますが、それをうまく物語に織り込み、時にゲスト出演で再会させるという“緩やかな繋がり”が、このドラマの大きな魅力となっています。
降板=さよなら、ではなく、
“またいつか会えるかもしれない”ーーそんな温かさも「ブラウン神父」が長期間にわたって愛され続ける理由の一つなのですね。
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