イギリスの本格ミステリードラマ「カササギ殺人事件(原題:Magpie Murders)」が、「原作より断然面白い!」と話題です。
原作はアントニー・ホロヴィッツによるベストセラー小説。ですが、「小説は途中で挫折したけど、ドラマは最後まで夢中だった」という声も多く、小説よりドラマの評価が逆転しているのが特徴。
本記事では、ドラマ版『カササギ殺人事件』がなぜ「傑作」と評されるのかを徹底解説!
原作との違いや、1人2役のキャスト演出、さらには作品に仕込まれた“アナグラムの秘密”まで、ネタバレありで読み応えたっぷりにご紹介します。
カササギ殺人事件 ドラマ版はなぜ高評価?【結論】
2022年に英国の公共放送チャンネル「BBC One」で放送され、米国では「PBS Masterpiece」で配信されたドラマ版『カササギ殺人事件』。
脚本は原作者ホロヴィッツ本人が手がけ、Rotten Tomatoes(海外レビューサイト)でも視聴者スコア91%(2023年時点)という高評価を獲得。Amazonのレビューでも星4.5以上の好評価が並び、「小説より分かりやすく、テンポがよい」と絶賛されています。
その理由を詳しく見ていきましょう。
面白さの理由①:テンポよく切り替わる“二重構造”
『カササギ殺人事件』は、作中作ミステリーと現実の事件という2つの物語が交互に展開される“二重構造”。
原作では上巻が1950年代の「アティカス・ピュント」編、下巻が現代の「編集者スーザンの謎解き」という分離スタイルでしたが、ドラマではその構成を刷新。原稿を読むスーザンの視点から、すぐに作中のアティカスの世界に飛び込む演出で、テンポよくシンクロして展開していきます。
この「現実×作中作の交錯」が、視聴者に心地よい緊張感と遊び心をもたらしてくれます。
面白さの理由②:原作者ホロヴィッツの“セルフリライト”脚本
原作の冗長さを見事に回避したのが、ホロヴィッツ本人によるドラマ用の脚本です。
彼は2017年の『The Guardian』紙のインタビューで、「この作品は、殺人ミステリーというジャンルへのメタ的な“論文”であり、ミステリー作家という存在の裏側を描きたかった」と語っています。
その意図はドラマ版でより明確に表現され、アラン・コンウェイという偏屈な作家像には、ホロヴィッツ自身の出版業界への皮肉やブラックユーモアが反映されているとも言われています。
面白さの理由③:キャストの“1人2役”が絶妙
このドラマの見どころの1つが、現代と1950年代の両方に登場するキャストたちが“1人2役”を演じていることです。
たとえば──
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マシュー・ビアード:1950年代ではアティカスの助手「ジェームズ・フレーザー」、現代では作家アラン・コンウェイの恋人「ジェームズ・テイラー」として登場。格好や髪型は時代に合わせてまったく違うものになっていますが、ファーストネームが同一でラストネームも韻を踏んでいるため、ドラマ視聴者はすぐに気づけるようになっています。
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ピッパ・ヘイウッド:1950年代では資産家の妹「クラリッサ・パイ」、現代ではアランの妹「クレア・ジェンキンズ」。どちらも、強く裕福な兄の陰に隠れた冴えない貧しい妹です。ドラマでは2人の探偵が妹を尋ねるシーンなどで、ピッパ・ヘイウッドの1人2役がうまくシンクロしています。
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チェ・オマンバラ:どちらの時代でも牧師役を演じています。1950年代のほうではロビン・オズボーン、現代ではトム・ロブソンという役名です。この、OsborneとRobesonもアナグラムになっているんですよ!
こうした“鏡写し”の構造に、視聴者は「これは伏線か?」「意図があるのか?」と自然に推理モードに引き込まれます。これはドラマならではの演出効果といえるでしょう。
ネタバレ注意|アナグラムに仕込まれた“作家の叫び”
物語のキーパーソンであるアラン・コンウェイは、作中で“アティカス・ピュント”シリーズを9作書いています。
その9作品のタイトルの頭文字に注目。
Atticus Pünd Investigates
No rest for the wicked
Atticus Pünd takes the case
Night comes calling
Atticus Pünd Christmas
Gin & Cyanide
Red rose for Atticus
Atticus Pünd Abroad
Magpie Murders
並べると、”An Anagram”となります。
ここには、「アナグラムだよ!」というメッセージが隠されていたのです!
そして、”Atticus Pünd”という、アラン・コンウェイが生み出した大ヒット作の主人公探偵の名前の文字を入れ替えると⋯
- Cat Up Nudist
- A Stupid C***
どちらも下品な言葉が出来るのです。c***は、英語圏で「もっとも卑猥な言葉の1つ」だそうです。
これらは、「売れるために仕方なく書いていた小説への皮肉」としてアラン・コンウェイが仕込んだもの。その後、末期ガンに侵され、書きたくない大衆ミステリー小説を必死に書いていることが無意味だと悟ります。もともと、タイトルにアナグラムを仕込んでいたアランは、これを利用してアティカス・ピュントシリーズを終わらせようとしたのでした。
このように、ミステリー内に“作者の心情”までも仕掛けとして織り込むのが、ホロヴィッツ流の知的遊びなのです。
カササギ殺人事件|原作とドラマの大きな違い
| ポイント | 原作小説 | ドラマ版 |
|---|---|---|
| 構成 |
上巻=作中作、下巻=現代パートで分離 |
並行進行 |
| キャラクター好感度 | スーザン&アランはやや不評 | 映像演出で魅力UP |
| テンポ感 | 冗長との声多数(Amazonレビュー平均4.0) | テレビ向けに脚本最適化(Rotten Tomatoes視聴者91%) |
特に、「現代の事件が凡庸」「キャラに魅力がない」とされた原作に対して、ドラマはこれを見事に克服している点が評価されています。
どこで見られる?カササギ殺人事件ドラマの視聴方法
2025年7月現在、日本国内での視聴方法は以下の通りです:
- WOWOWオンデマンド:全6話(字幕・吹替)配信中
- HULU:全6話(字幕・吹替)配信中
※視聴可能状況は変更される場合があります。最新情報は各サービスの公式サイトをご確認ください。
カササギ殺人事件ドラマ版まとめ|原作を超えた傑作ミステリー!
英国発のドラマ『カササギ殺人事件(Magpie Murders)』は、原作小説の魅力を凝縮しつつも、よりスピーディーで分かりやすい傑作に仕上がっています。
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原作の“二重構造”をテンポよく再構成
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原作者ホロヴィッツ自ら脚本を手がけ、冗長さを解消
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現代と1950年代をつなぐ“1人2役”キャストが仕掛けとして秀逸
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アナグラムに込められた知的な遊び心も健在
ドラマは全6話構成で、WOWOWオンデマンドなどで配信中(※配信終了の可能性もあるため要確認)。
日本語字幕つきで視聴可能なので、「原作で挫折した…」という方もぜひ一度試してみてください。
“読んでモヤモヤ、だけど、観てスッキリ”という、異色のミステリードラマです。



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