英国ドラマ『オックスフォードミステリー ルイス警部』は、事件の面白さはもちろん、主人公ロバート・ルイスと相棒ジェームズ・ハサウェイの“距離感”がじわじわ効いてくるシリーズです。
そして、ふたりを演じるケビン・ウェイトリー(Kevin Whately)とローレンス・フォックスの言葉を追うと、この作品がなぜ長く愛されるのかが、ぐっと具体的に見えてきます。
今回は、2011年のシリーズ6放送前に行われたインタビューの内容を中心に、
- キャストが語る作品の魅力
- オックスフォードの“特別さ”
- ロバート・ルイスという男の変化
を、ドラマの見どころとあわせて徹底解説します。
『主任警部モース』も『刑事モース』もいいけれど、なぜか断然ハマってしまう『オックスフォードミステリー ルイス警部』の魅力を味わい尽くしましょう。
ルイスが“自分のドラマ”になった瞬間:ケビン・ウェイトリーが語る手応え
言うまでもなく、ルイスは『主任警部モース』でモースの相棒(部下)でした。
田舎出身でとことん人が良い。そんな「凡人」ルイスが、スピンオフで主役になった当初は、視聴者側にも「モースの影」を無意識に探してしまう空気がありました。
ところが、シリーズが続くうちにルイスはしっかりと物語の主人公へと昇格していきます。
演じたケヴィン・ウェイトリー自身も、

“Six years in I think viewers have got used to the show. It’s funny how many people were affronted by the way Morse treated Lewis, but now he’s very much his own man.”
直訳すると、「6年目に入って、視聴者もこの番組に慣れてきたと思います。モースがルイスに接するやり方に腹を立てた人がどれほど多かったか、面白いですよね。でも今では、彼はすっかり“自分自身の男”になっています。」といったところでしょうか。
筆者自身もそうなのですが、気がつくとモース以上にルイスに愛着が湧いている。そんな現象がみなさんにも起きていませんか?ケヴィン・ウェイトリーが言うように、「天才肌」のモースが「凡人」ルイスにきつく当たる場面を記憶している視聴者の多くは、知らずにルイスを自分にとって圧倒的に身近な人物として感じていたのです。そして、モース亡きあと、そのルイスが中心に立ち、シリーズを引っ張る存在になったことで、すっかりルイスの物語に没入した。そんなところではないかと、分析しています。
いずれにせよ、ケヴィン・ウェイトリーという俳優にとって、ロバート・ルイス役は長きに渡って演じてきた役となりました。ルイスが多くの人に愛されることは、俳優冥利に尽きるのではないでしょうか。
ほかの刑事ドラマと違う点は?――「オックスフォードがもう一人の登場人物」
ケビン・ウェイトリーが語った「ルイス警部」の魅力。
それは、オックスフォードという要素が色濃く組み込まれている点です。このシリーズには、大学・研究者・学生といった“学術都市ならでは”の角度があります。そしてキャストも、実力派のゲストに、ドラマスクール卒の若い俳優が混ざっているんです。そこに世代の幅が自然に出る。まさにオックスフォードという街そのもののようなケミストリーが生み出され、結果として、観る側の年齢層にも広がりが出る――という見立てです。
「街が“別のキャラクター”になっている」という感覚は、まさにこのシリーズの核でしょう。古い石造りの建物、静かな学寮、庭園、川辺。事件の陰惨さすら、あの街の美しさが一度受け止めて、独特の余韻に変えていきます。
オックスフォードという街をさらに強調するのが、映像の質。制作のクオリティが高いことは、映像美を見れば一目瞭然ですね。
撮影で最も使う場所だったのがオリエル・カレッジです。ケヴィン・ウェリトリ―は、「ルイス警部」の撮影で何度も足を運ぶうちに「もうホームみたいなもの」になっていったと言います。いかにもイギリスらしいキャンパスは、もちろん本物の大学のキャンパス。こんなところで学べる学生たちが羨ましいですね・・・。
その近くの庭園、そして古い城壁、そこから見下ろすクライストチャーチ・メドウ――このあたりの描写が、いかにも“ルイスが好きそうな静かな場所”という感じですね。
ちなみに、ランドルフ・ホテルには「モース・バー」があるそうです。観光客向けに“モースとルイスのカクテル”が提供されているらしいです。聖地巡礼するチャンスがあるファンの方はぜひ、立ち寄ってみてください。(筆者はイギリスに行くチャンスには、今のところ恵まれていません…)
28年演じて分かったルイスの変化:「陽気」から「少し不機嫌」へ
最終的に、ケビン・ウェイトリーは、ルイス役をなんと28年10か月も演じました。
そんな長い年月が経過するなか、ルイスは、昔の“朗らかで気さくな相棒”から、年を重ねるにつれて少しずつ不機嫌になっていきました。これはファンなら頷く人が多いはずです。
ただ、その“グランピーさ(不機嫌さ)”は嫌味ではなく、何の影も痛みもなかった若者が、刑事として様々な喪失や後悔を経験していったという、「等身大の人生の重さ」そのものです。
不機嫌さを抱えながら、それでも現場に立ち続ける男の表情。それこそがルイス警部の魅力ではないでしょうか。
ルイス×ハサウェイは“オッドカップル”:年々 cheeky になる相棒
ハサウェイは年々 “cheeky” になっていく――とケビンは言います。ここでの cheeky は、単に「無礼」や「生意気」というより、相手を小突くような憎まれ口や、茶目っ気のあるツッコミが増えていくというニュアンスです。
ただし、ルイスも黙って受け流すタイプではなく、同じだけ言い返す。だから二人のやり取りは一方的な反抗ではなく、遠慮のない掛け合いとして成立していきます。
その結果、二人はまさに“オッドカップル”。
性格も世代も価値観も違うのに、現場ではなぜか噛み合う。ときには衝突するけれど、根っこには互いへの信頼と認め合いがある――そんな関係として描かれていくのです。
前述の、ルイス警部が円熟味を増して「不機嫌」になっていくのと対照的な存在である、若くて“cheeky”なハサウェイ。
皮肉屋で冷めているのに、同時に理想主義的。そのふたつがせめぎ合っている。人を観察するタイプで、必要なら自分の意見もはっきり言う。
そしてオックスブリッジ的な教育を受けた頭の良さが、ルイスを補完する――ここがコンビとしての強みになります。
ハサウェイの存在なくしてルイス警部の人気はあり得なかったでしょう。
モースとルイスが生み出したケミストリーとも、サーズデイとモースが生み出したケミストリーとも違う、圧倒的に人間味のあるケミストリーを、筆者は感じました。
もうひとつの素顔:ケビン・ウェイトリーと『Who Do You Think You Are?』
最後に、ケビンの“俳優としてではない顔”にも少し触れておきます。
彼はBBCの『Who Do You Think You Are?』で自分の家系をたどる回に出演し、16世紀まで遡る調査の中で、想像していなかった先祖の姿を知ったと語っています。
父方には、イングランド銀行の理事に関わる人物や、極東へ高級絹を輸出していた人物、さらにはヴァージニアからのタバコに関する事業で独占的な成功を収めた人物がいた――という、かなり“事業家の血”を感じる話が出てきます。
母方にも、有力な魚の商いで財を成した“ニシン長者”のような存在がいた、というエピソードも。
本人は「自分はコンピューターが苦手で、そもそも持っていないから、調べようがなかった」と笑いながらも、番組を通して歴史の授業を受けるような面白さがあった、と振り返っています。
俳優としてのルイスが“不器用で現代に取り残されがち”に見える瞬間があるのは、こうした本人の素朴さとも、どこか響き合っているのかもしれませんね。
ルイスという人物のまとめ
ロバート・ルイスは、天才肌で癖の強いモースの「相棒」として登場したときから一貫して、派手さよりも生活感と誠実さで物語を支えてきた人物です。理屈で人をねじ伏せるタイプではなく、現場の空気や人の気持ちを読み、時間をかけて真相へ近づく“刑事の体温”を持っています。
ルイスの最大の魅力は、常識人としての視点です。被害者や容疑者を「事件の駒」ではなく一人の人間として見ようとする。その姿勢が、学術都市オックスフォードの知的な事件に対して、現実感と重みを与えています。
演じたケヴィン・ウェイトリー本人も語るように、若い頃のルイスには「陽気さ」や「おおらかさ」がありました。けれど長年の警察人生と、私生活での喪失を経て、次第に頑固さ・渋さ・“少し不機嫌”な影が滲むようになります。
ただ、その不機嫌さは冷酷さではなく、踏ん張って立ち続ける人の疲労に近い。だから視聴者は、ぶっきらぼうな言い方をしても、彼を好きなままなんです。
ルイスは一人で完成する主人公ではなく、相棒ハサウェイとの対比で立ち上がります。2人の掛け合い自体が、ルイスという人物の魅力を更新する装置になっているようです。
『オックスフォードミステリー ルイス警部』を含むモース関連3部作は、いずれも異なった魅力にあふれています。みなさんは、どのシリーズがお気に入りですか。
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