英国ウェールズの静寂と霧の中に、人の心の闇が浮かび上がる——。
『警部マサイアス ウェールズ殺人捜査班』(原題:Hinterland ウェールズ語の原題:Y Gwyll)は、荒涼とした自然を舞台に、孤独な警部が難事件に挑む重厚なミステリードラマです。イギリスでは数々の賞を受賞した、ミステリーファンなら必見の傑作シリーズです。
見たことのないほど寂しく美しい風景と、言葉少なに真実を追う主人公。
海辺のトレーラーハウスにひとり暮らす彼の姿は、孤高で象徴的です。
この作品を一言で表すなら、「美しい絶望」。
軽快でおしゃれなミステリーもいいけれど、『警部マサイアス ウェールズ殺人捜査班』のように静かで深いミステリーこそ、心に長く残るんではないでしょうか。
※NHK BS11では「ヒンターランド」の邦題で放送されています。
警部マサイアス|見たことのないような風景に圧倒される
まず、圧倒されるのはその“風景”です。
霧に包まれた湿原、荒れた崖、風が鳴く海辺の村。どれも絵画のように美しいのに、荒涼としていて冷たく、寂しい。
まるで世界の果てに迷い込んだような錯覚に陥ります。
この「ウェールズの荒涼とした自然」が、登場人物たちの心の闇と呼応していて、物語のもう一人の登場人物のように感じられるのです。
特に印象的なのが、主人公トム・マサイアス警部の住まいです。
海辺の崖上の荒地にぽつんと建つトレーラーハウス。筆者は、ブラック・ジャックの家を思い出しました。ただ、ピノコのような癒やしの存在はそこにはなく、マサイアスの孤独と静謐が同居した空間です。
その“寂しさ”が、彼の抱える過去を語らずとも雄弁に物語ってくれるのです。
ちなみに、原題のHinter=ヒンターは、ドイツ語の前置詞でBehindという意味だそうで、「Hinter Land」は後背地(都市や港湾の経済的な影響を受けている地域のこと)を指します。ウェールズ語の原題「Y Gwyll」は「黄昏」という意味だそうです。このドラマは、英語とウェールズ語の2か国語で制作されたそうですよ。
【ネタバレなし】視聴者評価が高い「悪魔の橋」のあらすじ&感想
『警部マサイアス ウェールズ殺人捜査班』(原題:Hinterland)全3シーズンは、イギリスBBCで2013年から2016年に放送されました。「悪魔の橋」は、物語の一番最初のエピソードです。
アベリストウィス——海沿いの小さな町に赴任してきた警部トム・マサイアスは、過去に何かを抱えたまま、この地で新たなスタートを切ろうとしていました。
しかし、赴任直後にその静かな町で起きたのは、血まみれの現場から遺体が消えるという、不可解な殺人事件。マサイアスは地元警察のマレッド・リース警部補と共に捜査を進めます。
やがて明らかになるのは、被害者が経営していたという児童養護院で過去に起こった悲しい出来事です。真実が明らかになるたび、背筋がぞっと冷たくなるような感覚に何度も何度も襲われます。
感想としては、とにかく重みのあるエピソードでした。そして特に、キャストの演技が光っています。まるでノンフィクションを見ているかのような、リアリティ。後半の、真実が明らかになっていく過程では胸が締め付けられるような感覚が止まりません。筆者は最後、号泣してしまったほどです。
リース警部補が独り言のように語る、
「子供の不幸は無責任な親のせい」「子育ては日々の積み重ね」
という言葉や、犯人が語る「愛してくれる家族」という言葉が奥深いメッセージとして心に刺さります。
【ネタバレなし】視聴者評価が高い「湿原の少女」のあらすじの感想とあらすじ
次に、「警部マサイアス ウェールズ殺人捜査班」シーズン1「湿原の少女」のあらすじと感想をお伝えします。
ウェールズの荒涼とした湿原のど真ん中で、不自然な体勢に置かれた若い女性の遺体がみつかります。なぜかドレスアップしていて、蝋人形館の人形のように置かれているのです。
犯人を探すマサイアスは、被害者の人生を紐解いていくなかで、閉鎖的な小さな村の重苦しい人間関係と消せない過去を発見します。
最後は、まるでギリシア神話のような結末が待っており、胸の奥が使えるような重い余韻を残すエピソードです。
このエピソードでは、マサイアス自身のメンタルにも大きな動きが見られ、シーズン2への布石となっています。
感想としては、狭いコミュニティーで1つの過ちが大きな波紋となり、逃れられない運命を作り上げていくことにゾッとしました。筆者は都会に住んでいるので、地域社会ではそのような状態に陥ることはありませんが、「家族」という枠を考えるとそれは1つの閉鎖的な極小コミュニティー。言葉一つ、行動一つがとりかえしのつかない結果を産むことがありうるのではないかと、考えさせられました。
「警部マサイアス ウェールズ殺人捜査班」は、見終わったあとに深く残る“余白”があります。軽いミステリーに慣れている人ほど、この作品の「重さ」が新鮮に感じられるはず。
一人静かに夜に観たい、そんな大人のためのミステリードラマです。
どこで見れる?|『警部マサイアス(ヒンターランド)』の配信・放送情報【2025年10月最新】
2025年10月現在、『警部マサイアス ウェールズ殺人捜査班(ヒンターランド)』は、
Amazonプライム・ビデオ のシネフィルWOWOWプラスとスカパーのWOWOWプラス で視聴できます。
▶ Amazonプライム・ビデオ
Amazonプライム・ビデオ(シネフィルWOWOWプラス)では、シーズン1が見放題(無料) で配信中です。
字幕版なので、ウェールズ訛りをしっかり味わえます。初めて作品に触れる方にもおすすめ。
ウェールズの重厚な世界観や、警部マサイアスの孤独な生き方をじっくり味わうことができます。
▶ シネフィルWOWOWプラス(スカパー!)
スカパー!のシネフィルWOWOWプラス でも放送・配信されています。
ラインナップは以下の通りです:
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警部マサイアス ウェールズ殺人捜査班 #1~4(全4話)
放送予定:10月14日(火)18:00〜
ロンドンからやってきた孤独な警部トム・マサイアスが、ウェールズの荘厳で美しい自然を舞台に難事件へ挑むミステリー。
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警部マサイアス ウェールズ殺人捜査班2 #1~5(全5話)
放送予定:10月21日(火)18:00〜
閉ざされた町の秘密や複雑な人間関係に切り込む、緊張感あるシーズン。 -
警部マサイアス ウェールズ殺人捜査班3 #1~4(全4話)
放送予定:10月28日(火)18:00〜
ウェールズの壮大な風景を背景に、マサイアスが自らの過去と向き合うファイナルシーズン。
どのシーズンも「全話放送」スタイルで、字幕付き・高画質で楽しめます。
▶ その他の放送情報
かつてBS11でも(2021年に)放送(吹替版、「ヒンタ—ランド」の邦題)がありましたが、現在は再放送の予定はありません。
最新の放送予定はシネフィルWOWOWプラスの番組表をチェックするのが確実です。
📺 まとめ
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シーズン1:Amazonプライム・ビデオで無料視聴可
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シーズン2・3:スカパー!のシネフィルWOWOWプラスで放送中(2025年10月時点)
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BS11:過去に放送あり、現在予定なし
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