2025年1月にイギリスで放送・配信され、あっという間に大ヒットした「ペイシェンスとビー・ヨーク警察文書係の事件録」。あれ?なんだか見覚えがある⋯?
実は、このドラマ、フランスの大人気ミステリーシリーズ「アストリッドとラファエル文書係の事件簿」のイギリス版リメイク作品なのです!
大人気シリーズのリメイク作品に対しては、「オリジナルのほうがいい」という声が聞かれることが多いですよね。でも、この作品は本家を上回るほどの作品に仕上がっています!本家ファンにもぜひみていただきたいオススメ作品です!
本記事では、
- オリジナルフランス版との違いを徹底考察
- 実力派キャストの紹介
- どこで見れる?シーズン2は?
について、リメイク版を推し気味に(笑)、たっぷりご紹介します!
ペイシェンスとビー|本家アストリッドとラファエルとの違い
「ペイシェンスとビー・ヨーク警察文書係の事件簿」はリメイクなので、「アストリッドとラファエル文書係の事件録」と設定やストーリーは共通です。
なのに、キャラクターの雰囲気やドラマのシリアスさがまったく違い、まったく違うドラマのような新鮮さがあるのです。
ここでは、本家フランス版とイギリス版の具体的な違いを紹介してきます。
より”リアル”な「ペイシェンスとビー」
「ペイシェンスとビー」を見ていると、ペイシェンスが本当にそこら辺にいそうな女性に感じます。自閉症という特性を持っているけれど、定型発達の人と変わらない日常、人生を送っている。そんなペイシェンスに、親近感が湧き、より”リアル”な実在のキャラクターとしての存在感を感じます
オープニングの映像も、ペイシェンスのドキュメンタリーを見ているかのような演出です。アストリッドよりも、感情がわかりやすく伝わってきて、親近感が湧きます。
実は、イギリス版には、本当の自閉症の俳優が2人も出演しているのです。それが、このドラマのリアリティを増しているのだと思います。(自閉症を持つキャストについては、後ほど詳しく解説します。)
一方、本家「アストリッドとラファエル」のアストリッドは、自閉症の特性がやや大げさに描かれていると思います。ペイシェンスはバス停で男の人にデートに誘われたりしますが、街でアストリッドを見かけて声掛けするかな?と思うと疑問です。(アストリッド、ごめんなさい⋯)
ラファエルも、刑事としてはちょっと大げさすぎるところがありますよね。でも、ビーはよりリアル。理知的で刑事らしく、それでいて仕事とプライベートの両立が下手で、人として本物っぽさがあります。ペイシェンスの自閉症の会に顔を出したことで、自分の息子にも何かあるのではないかと思い始めるところも、非常に現実的なリアクションです。
イギリスらしい「人間の」ミステリー
イギリスのミステリードラマは、人間ドラマをしっかりと描く傾向があります。「刑事モース」などが典型ですね。
一方、フランスのミステリードラマは、イギリスと比べるとポップで、劇場っぽさが目立つことがあります。そんな人いるかいな!とツッコみたくなる感じ。「IQ160清掃員モルガンは捜査コンサルタント」などが典型です。
「ペイシェンスとビー」は、「アストリッドとラファエル」と同じストーリーを描いているのですが、全然違う!なぜだろうと考えたとき、人間ドラマがよりシリアスに描かれているのだと思いました。
ポップさはなく、重苦しい犯罪の雰囲気が漂うのですが、そんな中にクスりと皮肉が効いていたりする感じです。
個人的には、ペイシェンスとビーの息子アルフィの交流のシーンが、とても美しく胸を打ちました。ほんの小さな、出会いや会話が、人の人生に大きな意味を持つということを実感させる。イギリスドラマ特有の繊細さが、「ペイシェンスとビー」の見どころだといえます。
原題は”PATIENCE”
「アストリッドとラファエル」の原題は”Astrid et Raphaëlle”ですが、「ペイシェンスとビー」の原題は”Patience”です。
ペイシェンスは、主人公のファーストネーム。
主人公のファーストネームがドラマタイトルになっているイギリスミステリーといえば、”Endeavor”ですね。邦題は「刑事モースオックスフォード事件簿」です。
タイトルが示すように、イギリス版は、より主人公の成長や人生にフォーカスされたドラマであるといえます。本家フランス版の「アストリッドとラファエル」は、どちらかというと、バディ2人の掛け合いや化学反応を見どころにしているのだと思います。
ところで、このファーストネーム、あまり聞きませんよね。Patienceは、「忍耐」「我慢」という意味です。日本人としては、これ人の名前に使うの?と不思議に思いますが、調べてみたところ、歴史ある名前のようです。イギリス人からすると、「古めかしい」「硬い」印象の名前だと思います。
古めかしい名前といえば、「エルズベス」「任三郎」もそうですね。ミステリードラマの主人公の名前としては、「古めかしくて個性的」な名前が王道なのかもしれません。
キャストの秘密|ペイシェンス役は本当に自閉症!
「ペイシェンスとビー」のキャスト陣は、実に多様で実力派揃い!
まずは、若手なのに圧倒的な存在感がある主人公ペイシェンス役についてご紹介します。
ペイシェンス役キャスト|プロフィール
主人公のペイシェンス・エヴァンスを演じているのは、エラ・メイジー・パーヴィス(Ella Maisy Purvis)です。
エラ・メイジー・パーヴィスは2003年6月生まれのイギリス人俳優。2003年生まれとは、若いですね!
クラシックバレエから女優の道へ転向したエラ・メイジー・パーヴィスは、2024年には北アイルランド王立テレビ協会のブレイクスルー賞にノミネートされている実力派。
高身長ですが、子どものような表情を見せることがあり、文字通り目が離せなくなるような魅力があります。
キャストの秘密|本当に自閉症なのです
17歳のとき、エラ・メイジー・パーヴィスは自閉症と診断されました。
本当の当事者だから、”リアル”なドラマに仕上がっているのですね。
エラ・メイジー・パーヴィスいわく、自閉症とADHDを抱えながらのドラマの撮影は大変だったそうです。でも、以下のように語っています。
でも、キャストとスタッフ全員が本当に素晴らしく、最初からたくさんの配慮があったので、最終的には予想していたよりもずっと簡単でした。
なんて素晴らしい撮影現場なのでしょう(涙)非定型発達のエラが、女優として才能を開花させているのは、周囲の理解とサポートあってのことだということが伝わってきますね。
ちなみに、本記事を書くためにいろいろ調べていて知った言葉があります。
それは、”neurodiverse actors ”という言葉。ニューロダイバーシティ(neurodiversity)から来ている言葉で、「脳や神経の多様性のある俳優」という意味です。
そういえば、「テンペスト教授の犯罪分析ノート」に主演しているベン・ミラーも、テンペスト教授と同じく本当に強迫性障害を持っているのを思い出しました。イギリスでは”neurodiverse actors”がしっかりと活躍しているのですね。
実力派キャストの紹介|あの人も!
「ペイシェンスとビー」の魅了の1つは、実力派キャストの圧倒的な演技です。ここでは、主人公の脇を固める主要キャストをご紹介します。ミステリー好きなら「ハサウェイ!」とわかる、あの人も出演していますよ!
ローラ・フレイザー(ビー役)
ビアトリス・メトカーフ刑事(ビー)を演じているのは、ローラ・フレイザー(Laura Fraser)です。
ローラ・フレイザーは、1976年7月生まれのイギリス人俳優。イギリス版で、ペイシェンスとビーの関係が友情というより家族のようなものに見えるのは、ローラ・フレイザーがペイシェンス役のエラ・メイジー・パーヴィスのお母さんくらいの年齢だからかもしれません。
ローラ・フレイザーは、1996年頃からイギリスのテレビドラマで知られるようになったベテラン女優です。アメリカドラマ「アリーmyラブ」のアリー役のキャリスタ・フロックハートとよく似ています。
知的で愛情深いけれどプライベートはちょっとだらしないビー。個人的にラファエルよりも好きなキャラクターです。
マーク・ベントン(上司役)
ヨーク警察署で、ビーの上司カルビン・バクスターを演じているのは、マーク・ベントンです。
マーク・ベントンといえば、「シェイクスピアアンドハサウェイの事件簿」の、お茶目な探偵ハサウェイですね!
「ペイシェンスとビー」では、ハサウェイ役とはうってかわって、結果至上主義の上司役です。欧米の上司ってこんな感じなんだろうなとゾッとするほどに、厳しい⋯。あの、だらしないハサウェイとは別人のようです。
実際、インタビューでマーク・ベントンは、
ボス役を演じるのは新しい挑戦でした。シリアスな役を演じていると、ついついふざけてしまいたくなるものです。そこで、私は現場とキャラクターに少しコメディ要素を取り入れました。
と語っています。ドラマ内で時折、クスっと笑える”間”があるのですが、マーク・ベントンのアドリブだったのですね。
マーク・ベントンは、1965年11月イギリスのヨークシャー生まれです。ドラマに出てくるヨーク警察署というのは架空の警察署ですが、名前の通りヨークシャーに存在する設定です。なので、マーク・ベントンの地元を舞台としたドラマだということができます。
コナー・カレン(自閉症仲間役)
自閉症サポートグループのリーダー、ビリー・トンプソンを演じているのは、コナー・カレンです。アストリッドでいう、ウィリアム・トマ役ですね。
実は、コナー・カレンも、エラ・メイジー・パーヴィスと同様に、本当に自閉症を持っています。コナー・カレンは、演劇学校を卒業して3年しか経っていない若手俳優ですが、ペイシェンスの仲間として重要なキャラクターを演じきっています。
本物の自閉症のキャストが2人いることで、撮影は、自閉症の人と定型発達の人たちの”リアル”な化学反応の現場となったといえますね。本家を凌駕する魅力的な作品となった理由は、ここにあるのだと思います。
ペイシェンスとビー|どこで見れるの?
本家フランス版「アストリッドとラファエル」のファンの方にも、ぜひ別ドラマとして見ていただきたい「ペイシェンスとビー」。
「ペイシェンスとビー・ヨーク警察文書係の事件録」は、CSミステリーチャンネルで独占放送されています。(2025年6月時点)
ミステリーチャンネルオンデマンド(スカパー!)でも視聴できます。
今後、他の動画プラットフォームでも配信が始まるといいですね。
ペイシェンスとビー|シーズン2はある?
イギリスで2025年1月から放送された「ペイシェンスとビー・ヨーク警察文書係の事件録」。シーズン1は、大成功しました。
そのため、すでにシーズン2の撮影が始まっているそうです。シーズン2は2話増えて全8話になり、2025年中に放送される予定となっています。日本での配信日がわかりましたら、お伝えしたいと思います!
シーズン2では、ビー・メトカーフは出てこないそうです。代わりに、新しい刑事が登場することになっています。
邦題⋯どうするのかなぁ(笑)
「ペイシェンス・ヨーク警察文書係の事件簿」にしておけばよかったのですけどね。
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